SNSマーケコラム

ソーシャルマーケティングとは?取組事例や実施する上での注意点を解説

ソーシャルマーケティングとは?取組事例や実施する上での注意点を解説

ソーシャルマーケティングとは、環境保護や社会貢献などを意識した企業活動のことです。世界的に環境問題や経済格差などに対する関心が高まっていて、企業活動のなかでもこれらの問題は無視できません。そのため、ソーシャルマーケティングを取り入れる日本企業も多く存在します。

本記事では、ソーシャルマーケティングについて詳しく解説します。ソーシャルマーケティングを実施するメリットや注意点、実際の成功例などを紹介しているので、参考にしてください。

ソーシャルマーケティングとは

ソーシャルマーケティングは、大きく以下の2つの意味で使われる用語です。

・従来のマーケティングの手法を、行政機関や非営利組織の運営など公益のために活用すること
・企業が自社の利益だけでなく、社会全体への貢献を意識して活動すること

前者は、政府や自治体、病院や学校といった組織が活動するうえで、従来のマーケティングで用いられる「ターゲットのニーズを把握し、それを満たす商品・サービスを提供する」という考え方を取り入れることです。

一方後者は、営利活動を行う企業が採用するマーケティング手法です。顧客ニーズや自社の利益を重視する従来のマーケティング手法に対して、環境への配慮や社会全体の利益を考えた取り組みを行うことをソーシャルマーケティングと呼びます。

本記事では、企業が行う後者のソーシャルマーケティングについて、詳しく解説していきます。

ソーシャルマーケティングが注目される理由

ソーシャルマーケティングが注目されるようになった理由として、環境破壊や経済格差といった社会問題に対する関心の高まりが挙げられます。SDGs(持続可能な開発目標)など世界的な取り組みが進められていることもあり、「社会問題の解決のために何ができるか」と考えている人も少なくありません。

このような考え方は日々の消費行動にも影響を及ぼし、商品やサービス自体の性能や価値だけでなく、社会問題に対する企業の姿勢にも目が向けられるようになってきています。ソーシャルマーケティングは社会に貢献する企業であるというブランディングにつながり、社会全体を良くしながら消費者から選ばれる存在になれるとして、多くの企業から注目を集めるようになりました。

ソーシャルマーケティンとグとCSRの関係

「企業が社会貢献する」と聞くと、「CSR」のことを思い浮かべる人も多いでしょう。ソーシャルマーケティングとCSRは異なるものですが、関連性もあります。

ここでは、ソーシャルマーケティングとCSRの関係について解説します。

CSRとは

CSRは「Corporate Social Responsibility」の頭文字を取ったもので、企業が負うべき社会的責任のことをいいます。取引先・消費者・投資家・従業員・社会など企業を取り巻く関係者をすべてステークホルダーとして捉え、ステークホルダーに対して責任を持って企業活動を行うべきとする考え方です。

CSRでは、以下のような取り組みが求められます。

・法令遵守
・商品・サービスの安全性の確保
・廃棄物の適切な処理
・労働環境の整備
・地域への貢献
・人権の尊重
・環境保護 など

このようにCSRは範囲が非常に広く、社会の一員としてあらゆる側面から責任のある意思決定や行動を行う必要があります。

ソーシャルマーケティングとCSRの違い

CRSがさまざまな意思決定や行動において社会的責任を果たすことであるのに対し、ソーシャルマーケティングは社会貢献を重視した企業活動を指す言葉です。環境保護や地域貢献など両者に共通する取り組みもあるため、厳密には異なる意味で使われる言葉ですが関連性は高いといえます。

CSRは社会貢献も含めた幅広い取り組みを指しているため、ソーシャルマーケティングはCSR活動のひとつであるという考え方もできるでしょう。

ソーシャルマーケティングを実施するメリット

ソーシャルマーケティングを実施すると、以下のようなメリットがあります。

・他社との差別化ができる
・従業員のロイヤリティ向上
・優秀な人材の確保に繋がる
・資金調達がしやすくなる
・保険効果を期待できる

それぞれのメリットについて、詳しく解説します。

他社との差別化ができる

世の中には多種多様な商品・サービスが溢れ、明確な差別化が難しくなってきているのが現状です。ソーシャルマーケティングなら、商品・サービス自体の特徴や機能性に加えて、企業の姿勢による差別化が可能になります。

例えば以下のような商品は、購入することで間接的に社会貢献ができるという実感があり、環境保護や地域貢献などに関心の高い消費者への強いアピールポイントになるでしょう。

・製造時の環境負荷が低い
・売上の一部を地域活動に寄付している
・商品の空き容器を回収してリサイクルしている など

環境問題や社会問題への関心が高まっているなか、「同じような商品・サービスなら社会に貢献している企業のものを選ぶ」という消費者は少なくありません。

このように、ソーシャルマーケティングは他社との差別化に効果的で、自社商材の付加価値となります。

従業員のロイヤリティ向上

ソーシャルマーケティングを実践すると、従業員のロイヤリティ向上が期待できます。日々の仕事で「社会貢献に繋がる商品・サービスを自分たちが提供している」と実感できるため、仕事への誇りや愛社精神を持ちやすくなるのです。

従業員のロイヤリティ向上は、業務のパフォーマンスを高めたり離職を防いだりする効果があり、企業にとって大きなメリットとなります。生産性の向上や売上げアップなど、さまざまな良い効果をもたらしてくれるでしょう。

優秀な人材の確保に繋がる

社会貢献に繋がる企業活動に取り組むことで、企業イメージの向上が図れます。その結果、優秀な人材の確保に繋がる点もソーシャルマーケティングのメリットのひとつです。

日本は少子高齢化が進んでおり、生産年齢人口の減少によって人材確保が年々難しくなってきています。売り手市場のなかで優秀な人材を確保するには、求職者にとって魅力的な企業であることが重要です。ソーシャルマーケティングで企業イメージが向上すると、消費者だけでなく求職者からも好印象を持たれる可能性が高まります。

また、従業員ロイヤリティが高い企業は生き生きと働く人が多く、これも「この企業で働きたい」と思える要因のひとつとなります。離職率の低さもポイントになるでしょう。

このように、ソーシャルマーケティングは消費者や従業員に加えて、求職者からのイメージもアップし、人材確保の効果が期待できます。

資金調達がしやすくなる

ソーシャルマーケティングによって社会的信用が得られると、資金調達がしやすくなるというメリットもあります。近年は融資や投資の際に環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つを考慮する「ESG融資」「ESG投資」も積極的に行われています。

例えば、ESG投資の世界全体の資産残高は2016年から2020年までの間に55%増加しており、急速に注目度が高まっていることがわかるでしょう。※

資金調達の観点からも、ソーシャルマーケティングは企業に良い影響を与えてくれます。ベンチャー企業など資金調達に力を入れたい場合は特に、大きなメリットではないでしょうか。

※参考:野村證券「拡がる「ESG投資」

保険効果を期待できる

ソーシャルマーケティングに取り組んで世間から評価が得られると、「犯罪のターゲットになりにくい」といった保険効果が期待できるのもメリットのひとつです。

実際の例として、アメリカの暴動事件が挙げられます。放火や略奪などで多くの店舗が被害を受けるなか、以前からその地域で社会貢献活動に積極的だった企業は、暴動があった地域に多数の店舗があったのにも関わらず被害を免れました。

ソーシャルマーケティングは見返りを求めて行動するものではありませんが、このような副次的効果があることも知っておくとよいでしょう。

ソーシャルマーケティングを実施する上での注意点

ソーシャルマーケティングに取り組む際は、以下に注意してください。

・利益活動とのバランスを考える
・ストーリーを練った上で分野を選ぶ
・継続的に活動できる内容にする

上記の注意点について、解説していきます。

利益活動とのバランスを考える

ソーシャルマーケティングの活動は、基本的に無利益です。そのため、利益活動とのバランスを考えなければなりません。社会貢献を意識した活動に取り組むには、そのための予算が必要です。ソーシャルマーケティングに比重が偏りすぎると、予算が足りなくなって社会貢献活動の継続が難しくなるケースもあるため、注意してください。

主軸である利益活動にもしっかりと取り組み、ソーシャルマーケティングを継続しながら企業が成長していけるようなリソースの配分を考えることが大切です。

ストーリーを練った上で分野を選ぶ

ソーシャルマーケティングでは、具体的にどのような活動をするのかをしっかり検討しなければなりません。自社の事業内容と絡めてどうPRできるかストーリーを練った上で、どのような分野で実施するかを決めてください。

企業イメージや事業内容に関連する取り組みは、自然に受け入れられるストーリーを作りやすく、消費者からの共感も得やすいでしょう。多くの共感を呼ぶ取り組みは広く認知され、ソーシャルマーケティングの高い効果が期待できます。

「その分野で活動する理由」「活動によって目指す未来」などを明確にPRできるように、背景や活動内容、自社の特性などを含むソーシャルマーケティングの全体像をしっかり設計することが大切です。

継続的に活動できる内容にする

ソーシャルマーケティングは、継続的に活動することが大切です。環境保護や地域貢献といったすぐに成果を出すのが難しいテーマが多く、「他者との差別化」「人材確保」といったメリットも長く活動に取り組むことで徐々に成果が出てくるものです。短期間の活動で終わってしまっては、ソーシャルマーケティングの効果を十分に発揮できません。

そのため、活動内容を検討する際は「長く続けられるか」という点も重視してください。ソーシャルマーケティングにかけられる予算や人員が限られている場合は、その範囲で無理なく継続できる内容になっているか確認しましょう。

世間への認知は口コミなどで徐々に広がっていくため、自社の取り組みについて広く知ってもらうにはある程度の時間が必要です。例えば、無理をして大規模な活動を開始しても、認知が広がる前に継続できなくなってしまっては意味がありません。

ソーシャルマーケティングの成功事例

最後に、ソーシャルマーケティングの成功事例を紹介します。次の3社の活動について紹介するので、自社の取り組みの参考にしてみてください。

・サントリー
・アメリカンエクスプレス
・ユニクロ

以下で、それぞれどのような活動を実施しているのか詳しくみていきましょう。

サントリーの事例「人類以外採用」

飲料メーカーであるサントリーは、環境保護に関する取り組みを積極的に展開している企業のひとつです。飲料の製造時に多くの地下水を使用するため、地下水を生み出す豊かな森を育む責任があるとして、「天然水の森」という森の保全活動を行う領域を設けています。

天然水の森に関するキャンペーンとして、「人類以外採用」を謳ったサイトを公開したことも話題になりました。動物や昆虫など人間以外を採用対象とし、事業内容は「水を育むために森を守る」としていて、ユーモラスなPR活動を行っています。同社のサイトでは水資源や自然を感じられる動画などを駆使し、PRにも力を入れていることがわかります。

アメリカンエクスプレスの事例「自由の女神修復キャンペーン」

クレジットカードブランドのアメリカンエクスプレスは、1983年に「自由の女神修復キャンペーン」を実施しています。これは、ソーシャルマーケティングの先駆けになったともいわれており、大きな反響がありました。

目的はキャンペーン名のとおり自由の女神像の修復で、アメリカンエクスプレスのクレジットカードで決済すると、1回につき1セントが修復費として寄付されます。この取り組みによって同社のクレジットカードの利用が急増し、企業にとっても大きなメリットがありました。

ユニクロの事例「RE.UNIQLO」

ユニクロは、不要となった同社の衣類を店頭で回収してリサイクル・リユースする「RE.UNIQLO」というプロジェクトに取り組んでいます。回収した衣類は難民キャンプや被災地に寄付したり、リユースできないものは燃料や防音材として加工したりして、資源の有効活用を目指しています。

環境問題については世界的に関心が高まっていて、着られなくなった服を店頭に持っていけばリサイクル・リユースしてもらえるのは十分な購買動機になるでしょう。RE.UNIQLOは、ファッションブランドがソーシャルマーケティングによる差別化に成功した代表的な事例といえます。

ソーシャルマーケティングを実施しよう

社会全体の利益を意識するソーシャルマーケティングは、環境問題などに関心が高まっている現代において注目を集めるマーケティング手法です。企業として社会貢献を目指すことは、結果として業績の向上や人材確保など多くのメリットにつながるため、CSR活動の一環として取り組んでみてはいかがでしょうか。

ソーシャルマーケティングでは、自社に合ったストーリーや背景を持つ活動内容を検討し、無理なく長期的に続けられるものである必要があります。本記事で紹介した成功事例も参考に、自社ならではのソーシャルマーケティングを検討してみてください。

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